65号 2016年2月発行

〈1〜3面〉

戦争法廃止と─憲法加憲阻止に向けて   大内要三さん(ジャーナリスト)に聞く

Q 政府は手始めに緊急事態条項を日本国憲法に加えるところから、憲法を改正しようとしていますね。そのために、他の国には緊急事態法があるのに、日本にないので緊急事態の時に困るという言い方をしていますし、稲田朋美はどこの国にも緊急事態法があると言いましたが本当でしょうか。
A 米国憲法に緊急事態条項はありません。先進国で憲法に緊急事態条項のある国はフランスとドイツぐらい。フランスのドゴール憲法はアルジェリア独立戦争のなかでできたものですし、ドイツ基本法は州が大きな権限を持っているために有事の権力集中が必要とされているわけです。日本でも必要といいますが、自然災害でいうなら、3・11東北大震災・原発事故の時は、憲法に緊急事態条項がなくても、自衛隊は非常に統制の取れた動きをしたし、日本国民は乱れた行動はとりませんでした。
 私たちは2010年に自民党の発表した「憲法草案」に、緊急事態条項の新設に反対する勢力は、軍隊が武力を持って制圧すべき相手となるでしょう。そういう緊急事態条項をつくれば国会は何の力もないものになるわけで、大変危険です。

Q 中国が南沙諸島に埋め立て地をつくって領海を主張しているので、日本の石油輸送船が通れなくなって経済に影響が出るという主張がありますが…
A  戦争でもなければ、他国の領海内でも自由に航行できることが国連海洋法条約によって保証されています。平時でも軍艦なら事前に通告しなければ危険でしょうが、無害通航は自由です。軍艦が通れるのに民間の船が通れないはずはありません。中国も日本もこの国連海洋法条約を批准していますが、米国は批准しておりません。
 南シナ海は、日本にとっても中国にとってもASEANの国々にとっても大事なシーレーンで、ここが戦争状態になって貿易が途絶えたら、中国だって困るのです。中国は埋め立て地を今のところは平和利用をすると言っていて、今年の1 月には民間航空機が発着訓練をやっていますが、軍事使用はしていません。ここを軍事基地にさせずどの国も使えるようにさせるのが良いのではないでしょうか。
 昨年暮れにASEAN共同体が発足しました。経済協力が進みます。またASEANと中国の間に2002年に結ばれている南シナ海共同宣言には、領土問題を軍事力で解決はしないと書かれています。これを共同規範にして法的強制力を持たせようという話し合いが粘り強く行われています。そういう動きがあるのに、米軍と自衛隊が協力して南シナ海に進出したらどうなるのかということです。中国軍は対抗せざるをえないでしょう。

Q 中国の軍事力が強くなったから、日本も対抗上アメリカと手を組んでもっと強くならなければいけないと考える人も少なくないようですが…
A 自衛隊が名前の通り自国を侵略から守るためだけのものであって、海外派兵のできる実力を持つようにならなければ、中国も警戒する必要はなかったのです。世界一の軍事力を持つ米国と海軍力世界二位とも言われる日本がぐるになるのですから、アジアの国々が警戒を強めるのは当然です。
 1894年の日清戦争開始から1945年8月まで、日本は戦争をし
てきました。全部侵略のために外に出かけて行った戦争でした。最後の一年間だけ本国が攻められたわけですね。日本人は戦争というと被害ばかりを言う傾向がまだありますが、その前の50年以上何をやってきたのかということをしっかり反省して、伝えていかなければ、アジアの人々の信頼をえることはできません。

Q オーストラリア軍など多国籍軍と自衛隊の共同訓練が行われていますが、それは日米安保条約とか日米ガイドラインで規定されているのですか?
A 日米安保条約第5 条では、自衛隊と米軍が協力して「日本の施政下にある領域」を共同して守る約束になっています。そのための日米の軍事的な訓練が行われるのは安保条約の枠内です。但し、今度戦争法を制定して、「密接な関係にある他国」が攻められたら日本の外に自衛隊が出て行って「密接な関係にある他国」の軍隊と協力することになったのは、憲法九条の縛りに反すると同時に安保条約の縛りも超えているということが言えます。本来ならば安保条約を改定して、日米の軍事協力を日本の範囲を超えて世界に広げるとした条約改正がなされなければならないはずです。だから戦争法は憲法違反であるばかりか日米安保条約違反でもあるということが言えます。戦争法成立以前に締結された日米安保協力指針(ガイドライン)ではすでに、多国籍軍事協力が決められていました。
 そして遠い外国で他国の軍隊と共に戦うことが、今度の戦争法で確定したわけです。後方支援だけとか「現に戦闘が行われてはいない地域」とか「限定」してはいますが、現場では「限定」など無意味でしょう。これからは多国籍での軍事訓練・演習も当然のことになります。戦争法の施行は今年の3月からです。

Q 南スーダンの自衛隊員は、戦争法が施行される3月から「かけつけ警護」などをするのですか? 
A 国連PKO部隊の一環としての自衛隊の部隊が一一月に交代しました。半年で交代することになっていますから、今行っている第九次隊は古い法律と新しい法律のはざまで行っているわけです。任務が国会で承認されてその上で行きますから、この部隊には新しい任務は付与されていません。但し、行っている途中で新しい任務が付与されることはあり得ないことではありません。しかし、そのための訓練を受けていなかったら危険なことになります。そこで安倍政権は、参議院選挙が済むまでは新しい任務は与えないと言っています。ですから第一〇次隊から新しい任務が与えられることになります。
 新しい任務というのは宿営地共同防衛、治安維持、かけつけ警護が主な任務です。とりわけ治安維持はテロリストが潜んでいるかも知れない市街地をパトロールするわけですから危険な任務です。南スーダンは今でも内戦が収まっていないところで、市街地での戦闘が日常的にあります。国連部隊そのものが襲われるという事態も今までにありました。2012年と13年、南スーダンPKOのインド兵が襲撃されて亡くなる事件が起こっています。国連PKOは、すでに内戦終結後の「平和維持」部隊ではなくなっているのです。

Q 不幸にして自衛隊員が死亡した場合、日本の世論はどのように変わっていくと思いますか?
A 「靖国に祀れ」という声が出てくるでしょう。あるいは補償が不十分である、遺族年金をどうするのだ、勲章をどうするのだ、勲章の授与式に天皇が出るのかというようなことが次々に問題になってきます。それでは旧日本帝国と同じではないかと言う人間に対しては、「非国民」という言葉が出てきますよね。もちろん自衛隊員が誤って民間人を殺傷する危険も増えます。
命令に違反・抵抗する自衛隊員が出た時のために軍事法廷が必要、軍事刑法を作れという声も必ず出てくると思います。特別裁判所をつくることを許さない今の憲法体系がもう一つここで揺らぐわけです。それが現実的になるのは南スーダンの第10次隊が出発するときです。これはきちんと議論をしなければいけない問題だと思います。

Q 政府はIS の地域には自衛隊は出さないと言っていますが、戦争法では、アメリカからの要請があれば
拒否はできないように思うのですが?
A  戦争法を成立させた以上は、憲法の縛りがあるから派兵はできないと言は言えないでしょう。国会の承認が必要だと言いますが、戦争法はわざと複雑な構成にしています。新法の「国際平和支援法」を適用すれば海外派兵には必ず国会の事前承認が必要ですが、ほとんど同じ内容の「重要影響事態法」を適用すれば事後承認でいい。しかしまた、「国際平和協力法」にも国会承認の不要な任務もあります。

Qジブチ基地を拡充していますが、目的はアメリカの要請に応えるためですか?
A ジブチ基地はソマリア海賊対処のためにつくられた自衛隊の拠点で、陸海空の統合部隊が行っています。パトロールはやっているけれども海賊事件の発生がない状態が去年1年間続きました。ところが自衛隊は帰ってこない。ジブチ基地を半永久的に使うため拡充しています。日本・ジブチ地位協定によって自衛隊はジブチで特権も持っています。今後はジブチを拠点にしながら中東で何かあったときに、あるいはアフリカで何かあったときに、米国の要請に応じて出動することが可能になるわけです。

Q 戦争法で憲法九条は事実上死滅したという意見がありますが…
A 戦争法ができたことによって日本国憲法の平和主義は限りなく空洞化しましたが、なくなったわけではありません。軍刑法がないし軍事裁判所がない。戦争法自体にも附帯決議の縛りがありますし、安倍首相は集団的自衛権の「限定的行使」と言っている。だから憲法を丸ごと変えて国の形を変えないかぎり、戦争がいくらでもできる国にはならないということなのです。

Q 今日本にはどんな外交努力が必要だと思いますか?
A 日本の貿易相手の一位は中国です。外交上も対米国と同じくらい対中国を重視しなければいけないはずなのに、できていない。 韓国や台湾の場合、隣に中国がいて、冷戦時代から引き続いて米国の軍事援助を受けています。中国・米国の両方にバランスをとった外交政策が必要だということでは、日本と同じ条件と言ってもいいと思います。その韓国は、一方では米軍の駐留を許しながら、他方では朴大統領が北京での軍事パレードに参加したりしている。米中どちらの言いなりにもならず、敵対もしないで、バランスをとっています。台湾の場合もこれまでの国民党の馬総統は対中国との関係を重視してきたけれども、今回民進党が総統選挙に勝利しました。「独立はしないが中国に従属はしない」という蔡総統です。韓国も台湾も中米間で引き裂かれながら、どちらの言いなりにもならないという政治を模索しています。日本だけができていないのです。
 安保条約は廃棄すべきだと思います。それは米国とケンカをするということではありません。米国と対等の立場でアジアの国々と平和共存をしていく。強大な軍隊も海外派兵も必要のない、そのような外交をめざすべきです。

4面

 

「ねりま九条の会」会報に寄せて    岡崎ひでたか(児童文学者)

 わたしの義父は、妻と五人の子をおいて出征したとき、中国の蘇州で、飢餓によって横死する民衆の姿を見ました。当時中国にいた日本軍と軍属、その他の日本人を併せ四百万人の食糧を確保するために、農村からコメやムギなどとり上げ、農民ばかりか、穀物の暴騰で都市労働者まで飢えに苦しんでいたのです。
わたしは、銃火によらない戦争犠牲の事実があったことを中国で取材するなかで、武器なき農民たちの不屈の戦いや、少年隊の活躍に惹かれたのです。
八年にも及ぶ戦時下では、侵略した側の日本でも民衆は犠牲者でした。食糧不足は戦後まで続き、青少年は学ぶ権利も奪われ、国民は生きる権利さえ失ったのです。侵略戦争は、相手国にも自国の国民にも、どれほど深い悲しみ、苦しみを与えたか計り知れません。そして、だまされてきたと知ったときの強い怒り……  今までの戦争児童文学では、「こんなにひどいめにあった」という立場でほとんど書かれてきましたが、『トンヤンクイがやってきた』では、隣国の民衆まで殺戮した日本軍の加害の事実を、日本国民の悲劇と重ねて戦争の本質にせまりました。
児童文学では誰も書かなかった方法で、中国農村のコメをめぐる戦い、母親が従軍看護婦にとられた母子家庭の悲劇を描くなど、新しい素材にとりくみ、解説によって正しい理解を援ける工夫も試みました。
『トンヤンクイがやってきた』は、未来を託す少年少女、平和をねがう若者たちから、戦争体験者の世代にも、歴史の教訓を読みとっていただきたいために書き上げました。再び戦争への道を進めようとする今の政治を変えるべく、いっしょに考えていきましょう。
(ねりま九条の会会員)

 ※『トンヤンクンがやってきた』
  新日本出版社より
   2015年12月発行
       定価1800円

お知らせ

ねりま9条の会 講演会

命どぅ宝 沖縄の祈り 沖縄のたたかい お話 平良 修 牧師

>日時 2016年 6月30日(月) 午後6時15分開演
会場 練馬文化センター 大ホール

入場料  前売り 1000円  当日券 1000円

ジャン ユンカーマン監督 映画「日本国憲法」上映と交流のつどい

憲法とは誰のためのものか。戦争の放棄を誓った前文や、第9条をどう考えるのか。本作品は、憲法制定の経緯や平和憲法の意義について、世界的な知の巨人たちが語った貴重なインタビュ―集です。

日時 3月23日(水)  13:30~16:00
会場  男女共同参画センター   会費  300円  
 主催 石神井町9条の会

 今年の四月、高畑勲監督が「仏芸術文化勲章」を受章された。
「仏芸術文化勲章」は「芸術・文学の領域での創造、もしくはこれらのフランスや世界での普及に功績のあった人物」に授与されるも
ので、たいへん権威のあるものだ。「九条の会」呼びかけ人の加藤周一さんが一九八五年と九三年の二回受章されている。
高畑さんは東大仏文科在学当時からジャック・プレヴェール ─詩人、シャンソンの「枯葉」の作詞者であり、名匠マルセル・カルネの作品『霧の波止場』、『天井桟敷 の人々』のシナリオライターとして知られる─に傾倒されていた。アニメ業界入りを決意されたのも、「プレヴェールとアニメーション監督ポール・グリモーの制作による傑作アニメ『やぶにらみの暴君』に感銘を受けたのがきっかけ」であるという。
六月には、世界最大級のアニメーションの映画祭「アヌシー国際アニメ映画祭」で、長年、アニメーション映画の発展に貢献してきた監督に贈られる名誉クリスタル賞も受賞された。高畑さんのために後ればせながらでもお祝い会を兼ねて「アニメとフランス文化、そしてプレヴェール」といったテーマでお話をうかがう機会を設けたいと願っている。
勝山 繁( ねりま九条の会 事務局)

ねりま9条の会 事務局 電話:03-3921-8023 Eメールneri_9jo@yahoo.co.jp

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